TVアニメ『たまこマーケット』では、たまこの家に突然デラ・モチマッヅィという喋る鳥や、デラの飼い主である南の島の王家に仕えるチョイ・モチマッヅィ、そして王子のメチャ・モチマッヅィがやってきます。



しかし、劇場版『たまこラブストーリー』の本編には、モチマッヅィ家は登場せず、同時上映のショートアニメ『南の島のデラちゃん』にのみ出てきました。


本編に彼らが登場しなかった理由は簡単。もういらないから。


そもそも『たまこマーケット』におけるモチマッヅィ家の役割ってなんだったのか?




餅(=日常)の否定

『たまこマーケット』の世界は、魔法も超能力も存在しない普通の世界です。たまこは普通に学校に通って友達とおしゃべりし、家では餅屋の娘として餅を作ったり食べたりしています。

そんな平和で何も特別なことが起こらない世界に、ある日突然、デラたちモチマッヅィ家という非日常的な存在が現れるのです。


最初に来たデラが何のためにやってきたのかというと、王子の妃を探すためでした。デラはたまこが王子の妃になる娘だと思い込み、最後までたまこが王子と結婚するのかという問題を引きずっていました。

つまり彼らモチマッヅィ家の役割とは、たまこの日常を変えること。


この作品において、餅はたまこの日常の象徴みたいなものであることを考えると、「モチマッヅィ」という姓は、まさにたまこの日常を否定し、壊すことを暗示していると言えます。



モチマッヅィ家の敗北

しかし、たまこやうさぎ山商店街の人々は、非日常的な存在であるモチマッヅィ家を何のためらいもなく受け入れ、逆に自分たちの日常に取り込んでいきます。

「モチマッヅィ」家が否定すべきはずのものであった餅を、デラたちが美味しそうに食べてしまっていることが象徴的ですね。

結局たまこが王子と結婚するというのも、単なる勘違いであり、たまこの日常という強力な結界が崩れることはありませんでした。


つまり『たまこマーケット』とは、たまこの日常に対するモチマッヅィ家の敗北の物語なのです。



もち蔵、大勝利

では誰がたまこの日常を変えることができるのか。それは映画を観れば明らかですね。もち蔵です。

実際たまこはもち蔵に告られてから、何をするにも調子が狂っていて、日課の餅作りにすら支障がでるほどでした。

あれだけ恋愛に無頓着だったたまこを、いとも簡単に恋する乙女に成長させてしまったわけです。もはやモチマッヅィ家の出る幕はありません。



まとめ

日常を変えることに成功したのは、外部からやってきたファンタスティックな存在ではなく、日常の内部から発生した「幼なじみとの恋愛」というありきたりのもの。

しかし、そんなありきたりのものこそが、代わり映えのない日常に豊かさをもたらしてくれるのだ、というのが『たまこラブストーリー』でした。


ロマンとは、どこか遠いところからやってくるものではなく、意外と身近にあったりするものなのかもしれません。



映画『たまこラブストーリー』主題歌 「プリンシプル」


【映画パンフレット】 『たまこラブストーリー』 出演(声):洲崎綾.田丸篤志.金子有希