漫画・アニメ

『ご注文はうさぎですか?』原作コミックのセンス抜群なコマについて語るよ

こんにちは。家ではたいてい漫画やアニメを見て過ごしているイッキです。

僕がブログで漫画の感想を書く場合って、もっぱらストーリー展開とか、好きなキャラクター、あとは印象に残った台詞について語ることが今まで多かったんですけど…

ある漫画の、特定のコマだけやたら印象に残っている、ということもたまにあるんですよね。

好きな漫画だったら、そのぶんお気に入りのコマも多いのはわかると思うんですけど、

この漫画、全体としてはつまんないけど、ここのコマだけは何度見ても飽きないくらい好きなんだよな〜

という場合もあるんですわ。

そんなわけで、今回はいつもとは趣向を変えて、漫画のとある1コマのみを取り上げて、感想を語ってみたいなと思います。

 

『ごちうさ』史上最高のコマ

今回取り上げるのは、『ご注文はうさぎですか?』(以下『ごちうさ』)原作コミックの第2巻16ページのラストのコマです。

普段なかなか笑わないチノが、ココアと一緒に撮った写真を見て笑顔になる、というほっこりする場面を描いたコマです。

詳しい背景については、原作を読んで確認してもらえたらと思います。

 

このコマは、写真を見ているチノの視点で描かれているので、チノの顔は直接見えません。

そのかわり、右側に描かれたコーヒーの表面に顔が映っていることで、チノが笑っていることがわかるんですね。

このチノの笑顔の見せ方が、すごくセンスがあって良いなぁ〜と思うんですよ。

 

 

直接見せないことで、いっそう貴重に

チノみたいに、普段なかなか笑わないキャラクターが笑う瞬間というのは、その作品にとって大きな見せ場のひとつです。

そのため、そのキャラクターの笑顔を描く場合は、読者に強い印象を与えるために、他のキャラクターが笑うシーンに比べて、何かしら凝った演出がされたりします。

『ごちうさ』のこのコマはどうかというと、ここでは、チノの顔を直接描くのではなく、コーヒーの表面に間接的に顔を描いていますよね。

これによって、チノの笑顔の希少性が保たれ、より魅力的に感じられるように工夫されているんです。

普通に直接見せてしまったら、他のキャラクターが笑う場合とうまく差別化できない可能性もありますからね。

だから、あえて直接見せないというわけです。

 

西洋絵画の技法

このように、複数の視点(このコマでいえば、人物とその人物が見ているもの)を同時に描きたいときは、「鏡や水に映った姿を描く」、というテクニックが有効でして…

これは主に西洋絵画で発展した技法なんです。

例えば、ベラスケスの『鏡を見るヴィーナス』。有名な絵なので、一度は見たことある人が多いと思います。

この絵は、ヴィーナスの美しい背中を描きながら、同時にクピドの持つ鏡によって、ヴィーナスの顔も見えるように描かれています。

 

また、ヤン・ファン・アイクの『アルノルフィーニ夫妻の肖像』のように、本来は絵の外側にいて見えないはずの人物を鏡のなかに描くことで、空間に広がりをもたせる効果もあります。

↑この画像だと分かりにくいですが、後ろの壁にかけられている真ん中の丸いやつが鏡です。

 

このように、西洋絵画で描かれている鏡の多くは、異なる視点を与えて、多くの情報を表現するために、または画面の空間を拡大するために用いられてきました。

今回取り上げた『ごちうさ』のコマは、どちらかといえば前者の『鏡を見るヴィーナス』と同じパターンですね。

「鏡の技法」を使うことで、チノが見ている光景と、チノ自身の顔の両方を1つのコマに収めることに成功しています。

 

ポイントは、「鏡」の役目を果たすものとして、コーヒーを用いているところでしょう。

『ごちうさ』の舞台が喫茶店であるという設定とピッタリマッチしていて、オシャレだしすごく上手いなぁ〜と感じます。

 

まとめ

ちょっと小難しいことを書いてしまいましたが、今回取り上げたコマについて言いたいことをまとめると、こうです↓

・チノの顔を直接見せず、コーヒーの表面に映った顔で間接的に見せることで、彼女の笑顔の希少性を保ちつつ、魅力的に描いている

・西洋絵画でよく見られる「鏡の技法」が用いられているが、鏡の代わりにコーヒーを描くことで、作品の世界観に自然に溶け込んでいてGood

 

興味のある人は、ぜひ原作コミック第2巻を読んで確認してみてください。

 

おまけ : アニメ版ではどうなってる?

ちなみに、アニメではどう表現されていたかというと…

2期の第1話に収録されているんですけど、チノの笑顔がコーヒーではなく、窓に映っているシーンに変更されています。

たぶん、コーヒーだと小さくて目立たないのと、アニメーターにとっても描きにくい、といった理由なんじゃないかな?と思います。

窓に映った顔ならコーヒーの場合に比べて大きく描けるので、アニメ的にはより印象づけることができるんでしょう。あくまで僕の推測ですが。

 

個人的には、原作の演出のほうが好きなんですけどねぇ。でも、

顔を直接見せず、間接的に見えるように描くことで、チノの笑顔の魅力と希少性を高める

という原作の狙いを引き継いでくれたのは、原作ファンとしてありがたいと思います。